尿素窒素(BUN)

尿素窒素(BUN)の概要

この項目は、血液中の尿素窒素の量を調べる検査です。

尿素窒素とは、血液中に含まれる尿素です。
尿素は、体内で蛋白質が分解されてできる最終代謝産物です。
蛋白質は、体内で分解されるとアンモニアが発生します。
このアンモニアは、人体には有毒なため、肝臓で代謝されて、無毒な尿素になります。

尿素は、腎臓の糸球体でろ過されて、尿中へ排泄されますが、一部は尿細管で再吸収され血液中へと戻ります。

尿素窒素は、クレアチニンとともに腎機能検査として用いられます。

腎機能の指数としてBUN/クレアチニン比がよく用いられます。
通常は10:1 の比が保たれていますが、この比が10 以上の場合は腎外性因子を、10以下の場合は腎性因子を考慮します。

尿素窒素は、クレアチニンと同じように腎機能検査として用いられていますが、早期の腎機能低下では値の上昇が軽微で、糸球体ろ過値(GFR)が だいたい30%以下まで低下しないと基準値を超えるような高値を示さないことがあり、そのため、早期の腎機能異常を見過ごしてしまうことがあります。

そのため、尿素窒素が基準値内でも、腎機能の低下が疑われる場合などにおいて、eGFR(推定糸球体濾過量)やクレアチニンクリアランスと呼ばれるより正確な腎機能(糸球体濾過機能)検査を実施することがあります。

尿素窒素(BUN)が異常値を示す原因

高い場合

① 腎前性
1)蛋白の異化亢進(蛋白の分解が亢進した状態)
甲状腺機能亢進症、体内での出血、高熱、火傷、飢餓状態などのように、体内での蛋白の異化が亢進すると、その分尿素もつくられるため高い値を示すことがあります。

2)蛋白の摂取量の増加
摂取する蛋白量が多くなれば、その分尿素の作られる量も増えますので、高蛋白食を摂取した場合は高い値を示すことがあります。
ただし、腎機能に問題がない健常者の場合、食事の影響は、0~5mg/dl程度です。

3)腎血流量の減少
心不全のように、腎臓への血流が低下すると、腎臓の排泄機能がうまく働かず、その結果血液中に尿素が溜まるため、尿素窒素は高い値を示します。

4)尿素の再吸収亢進
脱水の場合、尿素の再吸収が亢進されるため、高い値となります。

② 腎性
急性、慢性腎炎・糸球体腎炎など、腎臓に直接障害が起きると、糸球体機能が低下するため、尿素をうまくろ過できずに血液中に尿素が溜まり、尿素窒素値が高い値となります。

③ 腎後性
尿路からの尿素の排泄障害が原因で起こります。
腎結石・尿管結石、膀胱癌などで尿の排泄障害が起こると、尿素が尿から排泄されないため、血液中の尿素窒素が高い値を示します。

低い場合

① 肝障害(重度)
アンモニアから尿素に変換される作業の多くが肝臓でおこなわれるため、重度の肝障害が起こると、この変換作業も障害されるため、低い値となります。

② 蛋白摂取量の減少
蛋白の摂取量が減少すれば、その分尿素の作られる量が減りますので、低い値となります。

③ 妊娠
妊娠の場合、胎児の成長に母体の蛋白が消費されること、妊娠により循環血液量が増えることにより低い値を示します。

尿素窒素(BUN)の生理的変動

性別による変動
男性の方が女性よりもやや高い値となる傾向があります。

日内変動
日中高く、夜低い傾向があります。

その他の影響による変動
高蛋白食の摂取、激しい運動により高い値を示す傾向があり、妊娠や低蛋白食の摂取で低い値を示す傾向があります。

検査の目的

1)腎機能のスクリーニング検査として
2)腎疾患を疑う場合や腎疾患の経過観察として

参考基準値(単位:mg/dl)

8 ~ 22

※基準値は施設ごとで異なる場合があります。

尿素窒素(BUN)が異常値を示す病態

高い値を示す場合
腎前性
消化管出血、脱水、心不全、火傷、高蛋白食の摂取、発熱、甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍 など

腎性
ネフローゼ症候群、腎炎、腎不全 など

腎後性
腎結石、尿管結石、膀胱癌、前立腺癌 など

低い値を示す場合
肝機能障害、低蛋白食 など

検査時の注意事項

検査前は激しい運動は避けましょう。
激しい運動により筋肉が壊され、その結果尿素が作られるため、通常よりも値が高くなることがあります。