尿酸値の概要
この項目は、血液中の尿酸(UA)の量を調べる検査です。
尿酸は、核酸(DNAやRNA)や生体内のエネルギー物質(ATP)の構成成分であるプリン体の最終代謝産物です。
血液中の尿酸は、腎糸球体でろ過され、尿細管でほとんどが再吸収されますが、一部は尿細管中に分泌されて尿中に排泄されます。
1日に排泄される尿酸のうち、約3/4 が尿中に排泄され、残りの 約1/4 が消化管に排泄され、腸内細菌によって分解されます。
尿酸は、プリン体の生合成や核酸の異化により体内で1日に約700mgつくられています。
これに対して、食事からのプリン体摂取は尿酸にして、300~400mg程度です。
尿酸は、水に溶けにくく、7.0mg/dl程度までしか血液に溶けることができません。
そのため、血液中の尿酸がこれ以上に増えると、血液中には溶けることができないため、溶けきれない尿酸が組織へ沈着を起こすようになり、痛風や関節炎などの原因となります。
尿酸が作られるのが多くなったり、腎臓からの排泄が低下することによって血液中の尿酸値が高くなる状態が高尿酸血症です。
高尿酸血症の約20%が尿酸の生成が多くなる尿酸産生過剰型、約60%が腎臓からの排泄が低下する尿酸排泄低下型、約20%が両方をあわせもつ混合型となります。
尿酸値が高い値となる要因
1)遺伝
痛風や高尿酸血症の方のうち、約20%の方が体質などの遺伝的な要因で高値を示すことがあります。
2)食生活
プリン体のほとんどは、体内でつくられますが、食事からの摂取によっても上昇します。
プリン体の摂取と同様に、摂取カロリーも尿酸の上昇と関係があります。
なぜならば、痛風または高尿酸血症の約60%に肥満があり、肥満度が高い程、尿酸値が高い傾向があるからです。
このように、肥満と尿酸値は深い関係があるため、肥満の場合、高値を示す傾向があります。
3)アルコール
アルコールは、尿酸の合成を促進し、また作られた尿酸の排泄を抑制する作用があるため、摂取することにより上昇しやすくなります。
4)ストレス
ストレスは、一時的に尿酸を上昇させます。
5)病気によるもの
血液が壊される病気や腎機能の低下するような病気がある場合、尿酸値が上昇することがあります。
6)薬剤によるもの
一部の薬剤には尿酸値を上昇させるものがあります。
(一部の利尿薬、喘息薬 など)
各疾患と尿酸値
痛風
尿酸が高い状態(高尿酸血症)が長く続くと(5~10年)、尿酸の結晶が関節部分に析出・沈着して痛風発作を引き起こすようになります。
溶血性貧血、白血病
溶血性貧血、白血病などのように、細胞の破壊が亢進された状態の場合、細胞内の核酸の分解量が増加するため、尿酸の生成量も増加して高い値を示します。
腎不全
尿酸は、腎臓から尿中へ排泄されるため、腎障害がおこると尿中に排泄されにくくなり、血液中の尿酸値は高い値となります。
運動と尿酸値
適度な運動は、肥満改善などにとてもよく、尿酸値を低下させるにはとてもよいことですが、激しい運動は逆効果です。
通常ヒトの体は、運動したり体温を維持するためにエネルギーを必要とします。
このエネルギーにATPと呼ばれる高エネルギーリン酸化合物を使用しますが、使用されるとATPはADPとなります。
ほとんどの場合、このADPはATPに戻ってエネルギーを放出できる状態になります。
しかし、激しい運動をすると、このADPがATPに戻る作業が追いつかず、分解されてプリン体となり、結果的に尿酸へと分解されてしまいます。
生理的変動
性別による変動
男性の方が女性より高い値を示します。
女性の場合、閉経後になると男性の値に近づきます。
これは、女性ホルモン(エストロゲン)によるもので、エストロゲンは尿酸の排泄を促進する働きがあり、閉経によってエストロゲンの分泌が減少すると尿酸値が上昇し、男性の値に近づくようになります。
年齢による変動
小児の方が成人よりも低値を示します。
検査の目的
高尿酸血症・痛風を疑う時やその経過観察のため
参考基準値(単位:mg/dl)
男性 : 3.7 ~ 7.0
女性 : 2.5 ~ 7.0
※基準値は施設ごとで異なる場合があります。
尿酸値が異常値を示す病態
高い場合
高尿酸血症、痛風、腎不全、溶血性貧血、白血病、悪性リンパ腫、脱水 など
低い場合
ファンコニー症候群、Wilson病、重症肝障害 など