抗Sm抗体

抗Sm抗体の概要

この項目は、血液中に抗Sm抗体が存在するかどうかを調べる検査です。

抗Sm抗体は、全身性エリテマトーデス患者の血液中から発見された抗体で、この患者名であるSmithの頭文字が抗体名の由来となっています。
このことからも分かるように、抗Sm抗体は、全身性エリテマトーデスに特異的な抗体で、診断項目の1つとして用いられています。

少し難しい話になりますが、細胞の核内には、snRNPと呼ばれる細胞の核内に存在するRNAと蛋白質の複合体が存在しています。

このsnRNPにはいくつか種類が存在し、このうちU1、U2、U4、U5、U6に共通して存在する蛋白に対する抗体が抗Sm抗体となり、U1に存在する蛋白に対する抗体がU1-RNP抗体(RNP抗体)となります。
そのため、通常抗Sm抗体が陽性の場合は、抗U1-RNP抗体(RNP抗体)も陽性となります。

抗Sm抗体は、全身性エリテマトーデスに特異的な抗体ですが、すべての患者が陽性となるわけではなく陽性率は15~30%となっています。

抗Sm抗体が陽性の場合、陰性の場合と比べて腎障害の発症率が高くなります。
また、中枢神経障害の発症率も高くなるといわれています。

全身性エリテマトーデスってどんな病気?

全身性エリテマトーデスは英語でsystemic lupus eryhtematosusと書きます。

systemicは全身、lupusはラテン語でおおかみ、eryhtematosusは紅斑という意味です。

このことからもなんとなく分かるように、「全身」とは様々な症状が全身にあらわれることを表し、「おおかみ」と「紅斑」は皮膚症状がおおかみに噛まれた跡のような赤い発疹ができることからこのような名前になりました。

この病気は、全身の様々な臓器に炎症が起きる病気で、発熱や倦怠感、関節痛など、症状は冒される臓器によってかわってきます。

患者の約9割は10代後半から30代までの若い女性です。

全身性エリテマトーデスの診断基準

全身性エリテマトーデス診断基準(アメリカリウマチ学会:1997年)
1、顔面(頬)紅斑
2、円盤状紅斑(ディスコイド疹)
3、日光過敏症
4、口腔内潰瘍(無痛性の場合が多い)
5、関節(2箇所以上)に、関節の痛みや腫れがある。
6、胸膜炎または心膜炎
7、腎障害(0.5g/日以上の持続性蛋白尿、または細胞性円柱の出現)
8、神経障害(けいれん、または精神症状)
9、血液異常
 a)溶血性貧血
 b)4000/mm3 以下の白血球減少 
 c)1500/mm3以下のリンパ球減少、または、
 d)10万/mm3 以下の血小板減少
10、免疫異常
 a)抗二本鎖DNA抗体陽性 
 b)抗Sm抗体陽性、または 
 c)抗リン脂質抗体陽性(①lgGまたは lgM抗カルジオリピン抗体の異常値②ルーブス抗凝固因子陽性 ③梅毒血清反応生物学的擬陽性、のいずれか)
11、抗核抗体陽性

経過観察中に同時あるいは経時的に11項目中いずれかの4項目以上が該当すれば、全身性エリテマトーデスと診断

抗体と自己抗体
抗体とは、自分のカラダ以外のもの(細菌・ウイルスなどの異物、がん細胞など)を異物とみなしてこれを排除しようとする蛋白で、生体防御に重要な役割を果たしています。

自己抗体とは、免疫機能の異常により、本来異物ではない自分の成分を異物と認識して抗体がつくられ、自分自身の細胞を攻撃してしまうものです。

検査の目的

全身性エリテマトーデス(SLE)が疑われるとき

参考基準値

・ 免疫拡散法 (単位:倍)
  検出せず (1倍未満)

・ EIA法
  7.0未満       : 陰性(―)
  7.0以上30.0未満 : 判定保留(±)
  30.0以上      : 陽性(+) 

※基準値は施設ごとで異なる場合があります。

抗Sm抗体が高値を示す病態

全身性エリテマトーデス(SLE)