トランスフェリンの概要
この項目は、血液中のトランスフェリンの量を調べる検査です。
トランスフェリンは主に肝臓で作られる蛋白で、血液中では鉄と結合して鉄を体内の各組織に運搬する働きがあります。
貧血時の検査に用いられるTIBC(総鉄結合能)は、このトランスフェリンが結合できる鉄の量を表したもので、通常トランスフェリンの1/3は鉄と結合しており、鉄と結合していないトランスフェリンはUIBC(不飽和鉄結合能)として表されます。
トランスフェリン1分子は鉄2原子と結合することができます。
鉄欠乏性貧血とトランスフェリン
鉄欠乏性貧血とは、その名のとおり体内の鉄が不足して起こる貧血です。
鉄は、血液中ではトランスフェリンと結合して各組織に運ばれて赤血球中のヘモグロビンの材料になったり貯蔵されたりします。
体内では、鉄欠乏性貧血のように鉄が不足すると、肝臓でトランスフェリンの産生を増やして、鉄と結合しやすくするように働きます。
そのため、鉄欠乏性貧血の場合、トランスフェリンは高値となります。
各病態とトランスフェリン
肝疾患
急性肝炎
急性肝炎の場合、肝細胞からのトランスフェリンの逸脱が起こるために高値を示します。
肝硬変
肝硬変の場合、肝臓でのトランスフェリンの産生能力が低下するために低値を示します。
ネフローゼ症候群
通常トランスフェリンは、腎臓の濾過器である糸球体を通過できず、また、通過してもそのほとんどが再吸収されるために尿中にはほとんど混入することはありません。
ネフローゼ症候群の場合、腎臓の糸球体などが障害をうけるために、トランスフェリンが尿中に漏れでてしまうために、血液中のトランスフェリンは低値となります。
膠原病・感染症
膠原病や感染症の場合、肝臓でのトランスフェリンの産生が低下したり、トランスフェリンの分解によって低値を示すことがあります。
生理的変動
性別による変動
女性のほうが男性よりも高値を示す傾向があります。
これは、月経により鉄欠乏状態になりやすいためです。
その他の影響による変動
妊娠、特に中期~後期は鉄欠乏状態になりやすいため、その影響で高値を示す傾向があります。
検査の目的
体内の貯蔵鉄の量や動態を把握するため
参考基準値(単位:mg/dl)
190 ~ 320
※基準値は施設ごとで異なる場合があります。
血清トランスフェリンが異常値を示す病態
高値
鉄欠乏性貧血、真性多血症、急性肝炎 など
低値
肝硬変、ネフローゼ症候群、無トランスフェリン血症、悪性腫瘍、ヘモクロマトーシス、感染症、膠原病 など