梅毒検査の概要
この検査は、梅毒感染の有無を調べる検査です。
梅毒とは、性行為感染症の1つで、トレポネーマ・パリダムと呼ばれる病原体が傷ついた粘膜や皮膚から体内に侵入して感染し、陰部にしこりができたり、鼠径部リンパ節が腫れたり、放っておくと全身に発疹や臓器障害を引き起こしたりします。
梅毒検査には、大きく分けて脂質抗原を用いる方法と、トレポネーマ(梅毒の原因菌)を用いる方法があります。
①脂質抗原を用いる検査(STS)・・・ガラス板法、VDRL法、RPR法など
トレポネーマ(梅毒の原因菌)抗原を使用せず、脂質抗原(カルジオライピン・レシチン)に対する抗体の有無を調べます。
カルジオライピン・レシチンに対する抗体は健常者でも微量ながら保有していますが、梅毒に感染するとトレポネーマ中のカルジオライピンン・レシチンに対する抗体が作られるために高値(陽性)を示します。
脂質抗原を用いる検査の場合は、梅毒感染後約3~6週間で抗体がつくられ、検査で陽性を示すようになります。
②トレポネーマ(梅毒の原因菌)を用いる検査・・・TPHA法、FTA-ABS法
トレポネーマ(梅毒の原因菌)抗原を用いて、それに対する抗体が存在するかを調べます。
TPHA法は手技が簡便でスクリーニング検査に適しており、FTAーABS法は手技が煩雑ですが、TPHAよりも鋭敏なため、最終的な確認や疑陽性を疑う場合などに用いられます。
TPHA法の場合は、梅毒感染後約3ヶ月で抗体がつくられ、検査で陽性を示すようになります。
このように、脂質抗原を用いるSTSの場合は、梅毒の原因菌を用いるTPHA法などよりも早期から陽性を示すことから、梅毒の早期診断に適しており、また、治療経過と結果が相関することから治療効果の判定としても用いられます。
しかし、梅毒でないにもかかわらず陽性を示す(生物学的疑陽性)ことがあるため、疑陽性が起こりにくいTPHA法など直接梅毒の病原体を用いる検査を併用して総合的に判断します。
検査の目的
梅毒の感染を疑う時や、内視鏡検査・手術・輸血などを行う際のスクリーニング検査として
参考基準値
(―)
※基準値は施設ごとで異なる場合があります。
梅毒検査が陽性を示す病態
梅毒
※偽陽性を示すもの(梅毒に感染していないのに陽性を示すもの)
STS検査
全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、EBウイルス感染、マイコプラズマ感染、妊娠 など
TPHA検査
らい、マラリア、レプトスピラ症 など
検査結果の見方
梅毒検査は一般的に、STSとTPHA(またはFTA-ABS)の2種類の検査を実施してその結果から判断します。
STSは感染早期から陽性を示すため、早期診断や治癒後は陰性を示すため治療効果の判定に用いられ、TPHAは菌体成分を抗原として検査するためSTSに比べて疑陽性が少ないので感染の有無の確認として検査します。
1)STS(―) TPHA・FTA-ABS(―)
梅毒に感染していない、若しくは感染早期
2)STS(+) TPHA・FTA-ABS(―)
梅毒感染初期、若しくは疑陽性反応
3)STS(+) TPHA・FTA-ABS(+)
梅毒感染
4)STS(―) TPHA・FTA-ABS(+)
治癒後の梅毒、TPHA・FTA-ABSの疑陽性(まれ)