TSHの概要
この項目は、血液中のTSH(甲状腺刺激ホルモン)の量を調べる検査です。
TSH(甲状腺刺激ホルモン)は、脳にある下垂体前葉と呼ばれる場所から分泌されているホルモンで、甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンの分泌を促す働きがあります。
TSHは、視床下部から分泌されるTRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)と甲状腺ホルモンによって分泌の調整がされています。
通常、体内で甲状腺ホルモンが増加すると、TRHとTSHが減少して甲状腺ホルモンの分泌を抑制するように働きます。
逆に甲状腺ホルモンが減少すると、TRHとTSHが増加して甲状腺を刺激し甲状腺ホルモンの分泌を促進するように働きます。
各病態とTSH
バセドウ病
バセドウ病は、体内で自己抗体(抗TSHレセプター抗体)が生じます。
この自己抗体がTSHの代わりに甲状腺を刺激してしまい、これによって甲状腺は甲状腺ホルモンを分泌してしまいます。
そのため、体内では甲状腺ホルモンが過剰になり、これをうけて下垂体はTSHを分泌しないようにはたらくため分泌抑制がおこり低い値を示します。
橋本病(慢性甲状腺炎)
橋本病は、体内で自己抗体(抗サイログロブリン抗体、TPO抗体など)によって甲状腺が攻撃されて炎症がおこり、その結果甲状腺ホルモンの分泌が低下します。
体内での甲状腺ホルモンが低下すると下垂体はTSHの分泌を増やして、甲状腺を刺激し、甲状腺ホルモンの分泌を促すようにはたらくため高い値を示します。
クレチン病
クレチン病は、先天性の甲状腺機能低下症であり、そのため甲状腺ホルモンの分泌が少なく、これをうけて下垂体はTSHを分泌して甲状腺を刺激し甲状腺ホルモンの分泌を促すようにはたらくため高い値を示します。
備考
ホルモンとは
ホルモンとは、体内の内分泌器官で作られる物質で、代謝や発達など体の健康を維持するためにさまざまな機能を制御しています。
ホルモンは、すべての組織や細胞に作用するわけではなく、ホルモンの種類ごとに作用する組織や細胞が決まっています。
自己抗体とは
自己抗体とは、免疫機能の異常により、本来異物ではない自分の成分を異物と認識して抗体がつくられ、自分自身の細胞を攻撃してしまうものです。
検査の目的
甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症などの甲状腺機能異常を疑う時や甲状腺疾患の治療判定や経過観察として
参考基準値(単位:μIU/ml)
0.4 ~ 4.0
※基準値は施設ごとで異なる場合があります。
TSHが異常値を示す病態
高い場合
原発性甲状腺機能低下症(橋本病など)、クレチン病、下垂体TSH産生腫瘍など
低い場合
原発性甲状腺機能亢進症(バセドウ病、亜急性甲状腺炎など)、下垂体性甲状腺機能低下症など