血色素量(ヘモグロビン濃度)

血色素量(ヘモグロビン濃度)の概要

この項目は、血液100ml中のヘモグロビン濃度(血色素量)を調べる検査です。

ヘモグロビン濃度を検査することにより、多血症や貧血の有無をチェックしています。
ヘモグロビンは、赤血球中に存在し、赤血球の重量の約1/3を占めています。
ヘモグロビンの働きは、肺で酸素を受け取り、全身の組織に運ぶことです。

ヘモグロビンの合成と分解

ヘモグロビンは、ヘムと呼ばれる鉄化合物(鉄イオンとプロトポルフィリンが結合したもの)と、グロビンと呼ばれるタンパク質が結合したものです。

ヘモグロビンも赤血球が寿命(約120日)を迎えたときに体内で分解されます。

ヘモグロビンは、ヘムとグロビンに分解され、ヘムはさらに分解されてヘム内の鉄は新しいヘモグロビンを作る材料につかわれ、プロトポルフィリンは胆汁色素(ビリルビン)となり体外に排泄されます。

グロビンは、分解されてアミノ酸になり、各種蛋白質の合成に利用されたり、尿素となって体外に排泄されます。

血液の色とヘモグロビンの関係

血液が赤いのは、赤血球に含まれるヘモグロビンによるものです。

血液は動脈血と静脈血では色が違うのをご存知でしょうか。

動脈血は鮮やかな赤色で、静脈血は暗赤色をしていますが、これはヘモグロビンが酸素と結合してると鮮やかな赤色となり、酸素と結合していないと暗い赤色をしているためです。

血色素量(ヘモグロビン濃度)の生理的変動

日内変動

血色素量(ヘモグロビン濃度)は、日内変動があり、わずかな変動ではありますが、一般的に朝食後に高値を示し、夜間就寝時に低い値を示す傾向があります。

性別による変動

一般的に男性の方が女性よりも高い値を示し、特に女性の場合では月経の影響により低い値を示す傾向があります。

年齢による変動

新生児では20g/dlと高い値を示し、その後低下して、生後6ヶ月ごろには12.0g/dl前後となり、この値が5歳くらいまで続き、その後徐々に増加して15歳頃には成人の値になります。

高齢者になると成人期よりも低い値を示す傾向があります。

その他の影響による変動

激しい運動後などカラダが脱水状態の場合、循環血漿量が減少するため、見かけ上高い値となります。

高地居住者の場合、酸素濃度が少なく、その状況下で体内に酸素を必要量取り込む必要があるために血色素量(ヘモグロビン濃度)が増加します。
妊娠、特に妊娠後半では、循環血漿量が増加するため、見かけ上低い値となります。

その他、喫煙者では高い値を示すことがあります。

血色素量(ヘモグロビン濃度)と貧血

赤血球やヘモグロビンが減少した状態を貧血と呼びます。

貧血とは、赤血球又はヘモグロビンが減少したために、全身の組織に十分に酸素がいきわたっていない、言わば酸欠状態です。

そのため、貧血になると、動悸や息切れ、立ちくらみ、疲れやすいといった様々な症状がでます。

ヘモグロビンの減少は貧血を示しますが、貧血にもいくつかの種類が存在します。

それを、ある程度区別するために、 ヘモグロビン濃度・ヘマトクリット値・赤血球恒数(MCV・MCH・MCHC)などを参考にします。

※赤血球恒数に関しては、こちらの赤血球恒数のページをご覧下さい。

検査の目的

1)診療時に実施する基本的項目として
2)健康診断の貧血検査として
3)貧血または多血症が疑われる場合や治療の経過観察

参考基準値  (単位:g/dl)

男性 : 13.5 ~ 17.5 

女性 : 11.3 ~ 15.2

※基準値は施設ごとで異なる場合があります。

血色素量(ヘモグロビン濃度)が異常値を示す疾患

高い値を示す場合
真性多血症、脱水症、高地居住者 など

低い値を示す場合
小球性低色素性貧血 (MCV、MCHCともに低下)
鉄欠乏性貧血、慢性感染症、持続的な出血 など

正球性正色素性貧血 (MCV、MCHCともに正常)
再生不良性貧血、白血病、脾機能亢進症(バンチ症候群)、腎性貧血、溶血性貧血(発作性夜間ヘモグロビン尿症など) など

大球性貧血 (MCV上昇・MCHC正常)
巨赤芽球性貧血(悪性貧血)、胃摘出後、肝硬変、甲状腺機能低下症 など

※MCV・MCHCに関しては赤血球恒数のページをご参照下さい。

検査時の注意事項

激しい運動により高い値を示すことがあるので、検査前は激しい運動は控えましょう。