クロール(Cl)の概要
この検査は、血液中のクロール濃度を調べる検査です。
通常、単独で検査されることは少なく、他の電解質(ナトリウムやカリウム)と同時測定されます。
クロール(Cl)は、細胞外液の総陰イオンの約70%を占める電解質成分の1つで、ナトリウムと同じように主に食塩として摂取されて体内に取り込まれ、大部分は尿中に排泄され、一部は糞便や汗などと一緒に排泄されます。
クロールは、血液の浸透圧やpHの保持に重要な役割を担っており、健常者の場合、狭い範囲でしか変動しません。
クロールなどの電解質濃度は、腎からの水分排泄や塩類の排泄によって調節されています。
腎での水分排泄の調節は、脳にある下垂体後葉から分泌されるホルモンである抗利尿ホルモンのバソプレシンによって浸透圧調整がされていて、塩類排泄においては、副腎皮質から分泌されるアルドステロンが主に調節をしています。
体内の陰イオン濃度は、クロールイオンと重炭酸イオンによって調節されており、クロールイオンが減少すると重炭酸イオンが増加するなどして陰イオンのバランスが保たれています。
クロールは体内で、ナトリウムと共に増減する性質と、HCO3または他の陰イオンと逆向きに変動する性質があるため、クロールの代謝異常の多くは、ナトリウムの代謝異常を伴うか、他の陰イオンが変動して起こる酸塩基平衡障害を伴います。
電解質って何?
電解質(でんかいしつ)とは、水などの液体(溶媒)に溶かしたときに、陽イオンと陰イオンに分かれて電気を通す性質を持つ物質のことです。
検査の目的
1)酸塩基平衡異常を疑う時
2)嘔吐、下痢、浮腫などにおける水代謝異常を疑う時
参考基準値(単位:mEq/L)
98 ~ 108
※基準値は施設ごとで異なる場合があります。
クロール(Cl)が異常値を示す病態
高値
下痢、尿細管性アシドーシス、呼吸性アルカローシス、脱水症(高張性) など
低値
嘔吐、腎不全、慢性腎炎、アジソン病、呼吸性アシドーシス、代謝性アルカローシス など