TIBC(総鉄結合能)の概要
この項目は、TIBC(総鉄結合能)を調べる検査です。
この検査は、主に貧血の鑑別目的でおこなわれます。
ヒトの体には、3~5gの鉄が存在していますが、血液中に存在する血清鉄は、トランスフェリンと呼ばれる蛋白と結合した状態で存在しています。
通常トランスフェリンは、約1/3が鉄と結合し、残りの約2/3が鉄と結合していない状態で血液中に存在しています。
TIBC(総鉄結合能)は、血液中のトランスフェリンが鉄と結合できる総鉄量を表しています。
そのため、TIBC(総鉄結合能)の増加や減少はトランスフェリンの増減を反映しています。
TIBC(総鉄結合能)は、体内の鉄が不足した状態で増加し、感染症や炎症、悪性腫瘍などで低下します。
また、ネフローゼ症候群のように蛋白が体外に喪失してしまうような病態や、トランスフェリンは主に肝臓で作られるため、肝障害や低栄養状態のように、トランスフェリンの合成が低下するような病態の場合は低い値を示します。
TIBCとFe、UIBCの関係
TIBCとFe、UIBCの関係は以下の式が成り立ちます。
TIBC=血清鉄+UIBC(不飽和鉄結合能)
鉄欠乏性貧血とTIBCについて
鉄欠乏性貧血とは、その名のとおり体内の鉄が不足して起こる貧血です。
鉄が不足すると、体内では鉄の不足を解消しようと消化管からの鉄の吸収を亢進させたり、鉄を効率よく運べるように血液中のトランスフェリンの量を増して鉄欠乏状態を解消させようとします。
そのため、トランスフェリンの量が増えることは、上記でも述べていますが、TIBCは、血液中のトランスフェリンが鉄と結合できる総鉄量を表しているため、鉄欠乏性貧血の時はTIBCは高い値を示すようになります。
TIBCの生理的変動
性別による変動
女性のほうが男性よりも高値を示す傾向があります。
また、妊娠時は高い値を示す傾向があります。
検査の目的
1)貧血、特に鉄欠乏性貧血や鉄過剰状態を疑う場合やその経過観察のため
2)貧血の鑑別目的
参考基準値(単位:μg/dl)
男性 : 250 ~ 385
女性 : 260 ~ 420
※基準値は施設ごとで異なる場合があります。
TIBC(総鉄結合能)が異常値を示す病態
高い値を示すもの
鉄欠乏性貧血、潜在的鉄欠乏状態、真性多血症 など
低い値を示すもの
溶血性貧血、再生不良性貧血、ネフローゼ症候群、慢性炎症性疾患、肝疾患、悪性腫瘍、巨赤芽球性貧血 など