血清アミラーゼ

血清アミラーゼの概要

この項目は、血液中のアミラーゼの量を調べる検査です。

アミラーゼは、食物から摂取したデンプンを糖に分解する消化酵素で、主にすい臓・唾液腺から分泌されています。

血液中のアミラーゼは、1/3が腎臓から尿として排泄され、残りは肝臓や網内系で処理されます。

通常アミラーゼは、唾液や膵液中に分泌されており血液中にはわずかにしか存在していませんが、唾液腺やすい臓が何らかの障害をうけると血液中にアミラーゼが流れ出るために高値となります。

通常アミラーゼを検査する際は、血清アミラーゼと尿アミラーゼの両方を検査します。

血清アミラーゼとアイソザイムについて

健康なヒトの血液中には、すい臓由来のアミラーゼが約40%、唾液腺由来のアミラーゼが約60%の割合で存在しています。

一般的にすい臓由来のアミラーゼをP型アミラーゼ、唾液腺由来のアミラーゼをS型アミラーゼと呼び、これらのことをアミラーゼアイソザイムと呼びます。

通常のアミラーゼの値は、P型アミラーゼやS型アミラーゼなどのすべてのアミラーゼを含んだ値となっています。

アミラーゼアイソザイムは、アミラーゼが高値のときに検査することにより、おおよその障害部位を推測する際に用いられます。

各疾患と血清アミラーゼ

膵炎
膵炎のようにすい臓が炎症によって障害をうけると、組織内にあるアミラーゼが血液中に大量に流れ出るために高値となります。

膵炎の場合、通常P型アミラーゼが高値となります。
ちなみに、膵炎の場合、アミラーゼ値と膵炎の重症度は必ずしも一致しません。

閉塞性障害
通常アミラーゼは、膵液として膵管 → 総胆管 → ファーター乳頭 → 十二指腸の順で流れています。

そのため、膵管、総胆管、ファーター乳頭が何らかの要因で閉塞を起こすと、アミラーゼが停滞して血液中に流入して高値を示します。
この場合通常、P型アミラーゼが高値となります。

唾液腺疾患
耳下腺炎や唾石なども上記の膵炎や閉塞性障害と同じように組織の障害や閉塞によってアミラーゼが血液中に流入することで高値となります。

この場合通常、S型アミラーゼが高値となります。

腎不全
通常アミラーゼの1/3は、腎臓の糸球体を通過して尿中に排泄されますが、腎不全によって尿中への排泄機能が低下すると、アミラーゼは血液中に停滞して高値となります。

腎不全の場合、通常血清アミラーゼはP型・S型共に高値となりますが、特にS型アミラーゼの上昇が著明となります。

マクロアミラーゼ血症
血液中のアミラーゼが免疫グロブリンと結合することにより、腎臓の糸球体を通過できなくなるために尿中に排泄されにくくなり、その結果血液中にアミラーゼが停滞して高値となります。

アミラーゼ産生腫瘍
一部の肺がんや卵巣がんなどで腫瘍からアミラーゼが産生されることがあり、これによってアミラーゼが高値を示すことがあります。

この場合通常、S型アミラーゼが高値となります。

血清アミラーゼの生理的変動

年齢による変動

新生児では低値を示しますが、5~10歳頃には成人と同じ値となります。

その他の影響による変動

やせている方は、やや高値を示す傾向があります。

検査の目的

1)すい臓疾患や唾液腺疾患が疑われる場合やその経過観察のため
2)アイソザイム測定を行なって、アミラーゼが高値になる原因となっている由来臓器を推定するため

参考基準値(単位:U/l)

40 ~ 125

※基準値は施設ごとで異なる場合があります。

血清アミラーゼが高い値を示す病態

血清・尿アミラーゼともに高値
膵臓疾患
急性膵炎、慢性膵炎、膵のう胞、すい臓がん など

耳下腺疾患
耳下腺炎(おたふくかぜなど)、唾石 など

腸疾患
十二指腸潰瘍、腸閉塞 など

その他
子宮外妊娠、アミラーゼ産生腫瘍(卵巣がん、肺がんなど) など

血清アミラーゼのみ高値
腎不全、マクロアミラーゼ血症 など