AST(GOT)の概要
この項目は、血液中のAST(GOT)の量を調べる検査です。
AST(GOT)は、生体内でアミノ酸代謝に関与している酵素です。
AST(GOT)は、肝臓・心臓・骨格筋・赤血球などに多く存在しており、特に肝臓に多く含まれているため、肝機能検査の項目として検査されています。
しかし、肝臓以外の組織にも存在するため、AST(GOT)のみで肝機能を評価することは難しいです。
AST(GOT)は逸脱酵素と呼ばれ、組織の障害があると組織中のASTが細胞外にでて血液に流れ出します。
そのため、上記でも記しましたようにASTを多量に含んでいる臓器(肝臓・心臓・骨格筋・赤血球など)が障害を受けると血液中の値は上昇します。
AST(GOT)は一般的に単独で検査することはなく、ALT(GPT)とペアで検査されます。
AST(GOT)は、ALT(GPT)に比べて肝臓に多く存在しますが、肝臓以外の組織(心臓・骨格筋・赤血球など)にも多く存在するため、ALT(GPT)に比べて肝特異性は低くなります。
骨格筋・心疾患の場合は、AST (GOT)値がALT(GPT) 値よりもかなり高い値を示す場合が多いです。
AST(GOT)は肝臓以外の組織にも多く存在することから、ASTのみが高い値の場合、肝疾患以外にも骨格筋疾患や血液疾患などが疑われ、ASTとALTが共に高い値の場合やALT(GPT)が単独で高い値の場合は、肝疾患が疑われます。
また、赤血球中にもある程度存在していますので、溶血性貧血などの溶血性疾患などでも値は上昇します。
心筋梗塞を発症した場合、AST(GOT)は4~8時間経ってから上昇しはじめ、12~48時間で最高値となり、だいたい3~5日程度で基準値となります。
備考
AST(GOT)・ALT(GPT)は一般的に肝機能検査として知られていますが、実際には肝臓の障害の程度を知る検査だと考えたほうが良いと思います。
なぜならば、上記でも記しましたように、AST(GOT)・ALT(GPT)は肝臓が障害を受けた際に血液中に流れ出るものであり、肝臓がしっかりと働いているかを検査しているわけではなく、肝臓の障害の程度を知る検査だからです。
AST(GOT)・ALT(GPT)と肝疾患の関係
急性肝炎の場合、一般的に値は極期(もっともひどい時期)ではAST>ALT、回復期はAST<ALTとなります。
また、急性肝炎の場合、肝細胞が多く壊されるため、ASTやALTが500以上を示すことがあります。
慢性肝炎の場合、一般的に値はAST<ALTとなり、肝硬変・肝がんの場合は、AST>ALTとなります。
脂肪肝の場合、アルコール性ではAST>ALTとなり、過食などによるものの場合AST<ALTとなります。
慢性肝炎や脂肪肝、肝硬変の場合、状態にもよりますがASTやALTが100以下や100前後の軽度増加の場合が多いです。
AST(GOT)の生理的変動
一般的に乳幼児では、成人よりも高値(成人の値の2~3倍高値を示すことがある)を示し、だんだんと減少して思春期頃、成人と同じ値となります。
健常者でも、激しい運動により、骨格筋がダメージを受けAST(GOT)が高い値を示すことがあります。
検査の目的
1)健康診断の肝機能検査として
2)肝疾患が疑われる場合や肝疾患の経過観察
参考基準値(単位:IU/l)
10 ~ 40
※基準値は施設ごとで異なる場合があります。
AST(GOT)が高い値を示す病態
肝疾患
肝炎(急性・慢性)、肝硬変、肝がん、脂肪肝 など
心・骨格筋疾患
心筋梗塞、筋ジストロフィー、多発性筋炎 など
血液疾患
溶血性貧血(発作性夜間ヘモグロビン尿症など) など
その他
膵炎、胆管炎、胆道がん など
検査時の注意事項
激しい運動により高値を示すことがあるので、検査の2日前からは激しい運動は控えましょう。