コリンエステラーゼの概要
この項目は、血液中のコリンエステラーゼの量を調べる検査です。
コリンエステラーゼとは、コリンエステルという物質をコリンと有機酸に分解する働きがある酵素です。
コリンエステラーゼには、アセチルコリンを特異的に分解するアセチルコリンエステラーゼ(真性コリンエステラーゼ)と、さまざまなコリンエステルを分解するブチリルコリンエステラーゼ(偽性コリンエステラーゼ)が存在しますが、検査で調べているのは、後者の偽性コリンエステラーゼのほうです。
血液中のコリンエステラーゼの大部分は肝臓でつくられており肝臓の機能を反映するため、肝機能検査として用いられます。
また、コリンエステラーゼは糖蛋白でできているため、肝臓の蛋白合成能の指標としても用いられています。
各疾患とコリンエステラーゼ
ネフローゼ症候群
ネフローゼ症候群では、尿中にアルブミンなどの蛋白が流出が起こります。
そのため、肝臓での蛋白合成能が亢進するためにコリンエステラーゼは高値を示します。
尚、アルブミンは尿中に流出してしまうために低値となりますが、コリンエステラーゼは分子量が大きいため尿中には流出しないため血液中にたまり、高値となります。
甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症の場合、体内の代謝の亢進が起こり、蛋白の異化が亢進(蛋白の分解が亢進した状態)が起こります。
その結果、肝臓では、蛋白の合成が亢進するためにコリンエステラーゼは高値を示すようになります。
有機リン中毒
有機リン系の薬剤は、体内に入るとコリンエステラーゼ活性を阻害するために、低値を示すようになります。
肝障害
慢性肝炎や肝硬変など肝細胞に障害が起こると、コリンエステラーゼの合成が低下するために低値となります。
コリンエステラーゼの生理的変動
男性の方が女性よりも高い値を示す傾向があります。
また、女性の場合、妊娠時は低下する傾向があります。
検査の目的
肝疾患や有機リン中毒が疑われる場合
参考基準値(単位:U/l)
男性:235 ~ 495
女性:200 ~ 452
※基準値は施設ごとで異なる場合があります。
コリンエステラーゼが異常値を示す病態
高値
脂肪肝、ネフローゼ症候群、甲状腺機能亢進症、糖尿病、気管支喘息、本態性家族性高コリンエステラーゼ血症 など
低値
有機リン中毒、慢性肝炎、肝硬変、肝がん、消耗性疾患(悪性腫瘍、重症感染症など) など