病態ごとにAST/ALT比が変化する理由
病態ごとのAST/ALT比について

病態ごとにAST/ALT比が変化する理由

病態によってAST/ALT比が変化する理由は、主に各組織及び肝臓に含まれる量の差と半減期の違い、ASTアイソザイムの3つです。

まず、この違いについて説明させて頂きます。
肝臓に含まれる量は、ASTが約140000(KU/g湿重量)に対してALTが約44000(KU/g湿重量)と圧倒的にASTのほうが多く含まれています。

また、その他の組織に関しても、ASTは肝臓以外の組織にも多く含まれているのに対し、ALTは肝臓以外の組織にはそれほど多く存在しないという特徴があります。

次に半減期は、ASTが約15時間、ALTが約40時間となります。
※半減期の解説については、酵素検査の測定値についてをご覧ください。

最後にアイソザイムについてです。
ASTには、ミトコンドリア由来のAST(m−AST)と細胞質由来のAST(s−AST)があり、通常時の血液検査におけるASTの値は、これらの和です。
細胞中の含有量はどちらも同じくらいですが、血液中のASTのほとんどは、s−

ASTが占めており、m−ASTは15〜30%程度です。
これは、細胞質由来のASTは軽度の障害でも細胞外に流出しますが、ミトコンドリア由来のASTはミトコンドリア膜に包まれているため、軽度の障害では細胞外にでないためです。

各疾患とAST/ALT比

これらを踏まえて各疾患時のAST/ALT比を見ていきましょう。
※通常、基準となるAST/ALTの比率は「0.87」ですが、「1」としてもさほど支障がないため、ここではわかり易くするために「1」としています。

1) 急性肝炎
急性肝炎の初期は、肝細胞の破壊が強いため、肝臓に含まれている量の多いASTが優位となるため、AST/ALT>1(AST>ALT)となります。

状態が落ち着いてくると、肝細胞の破壊も少なくなりまた、m−ASTの逸脱も減少するため、半減期の長いALTが優位となるためにAST/ALT<1(AST<ALT)となります。

2) 慢性肝炎
慢性肝炎のように持続的に肝細胞の障害が起きている場合は、障害が軽度(非活動性)であればm−ASTの逸脱も軽微であるため、半減期の長いALTが優位となるためにAST/ALT<1(AST<ALT)となります。

3) 肝硬変
肝硬変のように、正常な肝細胞が少なくなると、ASTとALTの上昇は軽度となり、またALT活性が低下するために、AST/ALT>1(AST>ALT)となります。

4) 脂肪肝、アルコール性肝障害
過栄養による脂肪肝の場合、障害が軽度であることから、半減期の長いALTが優位となりAST/ALT<1(AST<ALT)となります。

アルコールによる肝障害の場合、アルコールによる障害がミトコンドリアにまで及ぶため、AST/ALT>1(AST>ALT)となります。

5) 心筋梗塞などその他の疾患
ASTは肝臓以外の組織にも多く含まれているのに対し、ALTは肝臓以外の組織にはそれほど多く存在しません。
そのため、、肝疾患以外の多くの疾患はAST/ALT>1(AST>ALT)となります。