総蛋白の概要
この項目は、血液中の蛋白の量を調べる検査です。
ヒトの血清中には100種類を超える蛋白が存在し、これらをすべてあわせた蛋白の総量が総蛋白で、血清の約8%を占めます。
総蛋白は電気泳動という方法により、アルブミンとグロブリンに分かれ、グロブリンはさらにα1グロブリン・α2グロブリン・βグロブリン・γグロブリンの4種類に分けられます。
総蛋白の異常は、総蛋白の約60%を占めるアルブミンと、約20%を占める生体防御を司る抗体などが属するγグロブリンが関与しています。
そのため、総蛋白の増加や減少は、おもにこのアルブミンとγグロブリンの増減が影響してきます。
血清(けっせい)とは
血液を採取して、試験管に入れておくと次第に血液は固まりだして周囲に黄色い液体があらわれます。
この黄色い液体が血清です。
検査の種類にもよりますが、生化学検査の多くはこの血清を用いて検査を実施しています。
各病態と総蛋白
総蛋白の増加・減少は、アルブミンとγグロブリンの増減の影響を受けます。
アルブミンの場合、脱水症以外において増加することはほとんどなく、そのためアルブミンの減少が総蛋白に影響を与え、γグロブリンの場合は感染症などによる増加が総蛋白の値に影響を与えます。
まとめると、総蛋白が増加している場合は、脱水によるアルブミンの増加を除けばγグロブリンの増加が疑われ、総蛋白の減少はアルブミンの減少が疑われます。
脱水症
脱水症の場合、血液が濃縮されるために総蛋白がみかけ上高い値となります。
肝疾患
慢性肝炎などのように、免疫グロブリンが増加する病態の場合は、総蛋白は高値を示します。
但し、肝障害(特に重症肝障害)が起こるとアルブミンは肝臓で合成されることから、アルブミンの肝臓での合成能力が低下するために総蛋白は低い値を示します。
ネフローゼ症候群、蛋白漏出性胃腸症
ネフローゼ症候群、蛋白漏出性胃腸症のように、アルブミンが体外に喪失してしまうような病態があると総蛋白が低い値を示します。
感染症
細菌などによる感染を起こすと、体内では防御反応として抗体が産生されます。
抗体は蛋白で、γグロブリンに属するため総蛋白が高い値となります。
過度のダイエット、低栄養状態
ダイエット、低栄養状態のように、食事制限や食事の摂取量の不足によってアルブミンの原料となる蛋白が不足して作られなくなるために総蛋白は低い値となります。
生理的変動
年齢による変動
新生児の場合、成人よりも1.5g/dl程度低値を示し、加齢とともに増加して思春期には成人と同じ値となります。
高齢者の場合は、やや低い値を示す傾向があります。
その他の影響による変動
採血時の体位によって変動することがあり、臥位よりも立位で高い値を示す傾向があります。
また、早朝よりも夕方で高い値を示す傾向があります。
その他に、運動により高い値となる傾向があります。
妊娠中は低い値を示す傾向があります。
検査の目的
低蛋白血症や高蛋白血症を疑う場合やその経過観察として
参考基準値 (単位:g/dl)
6.7 ~ 8.3
※基準値は施設ごとで異なる場合があります。
総蛋白(TP)が異常値を示す病態
高い値を示す場合
脱水症、多発性骨髄腫、膠原病、慢性感染症、慢性肝炎 など
低い値を示す場合
ネフローゼ症候群、蛋白漏出性胃腸症、重症肝障害(肝硬変など)、吸収不良症候群、栄養摂取不良、胸水・腹水の貯留 など