HbA1c

HbA1cの概要

この項目は、総ヘモグロビン量に対するHbA1cの割合をみる検査です。

ヘモグロビンは、赤血球中に存在し酸素を運搬する働きがあるタンパクで、赤血球の寿命(約120日)を迎えるまでに一部は血液中の糖(グルコース)と結合します。

この糖と結合したヘモグロビンを、グリコヘモグロビン(糖化ヘモグロビン)と呼びます。

このグリコヘモグロビンにはいくつか種類がありますが、その多数を占めるのがHbA1cです。

これで分かるように、厳密にはグリコヘモグロビンとHbA1cは同一のものではありませんが、同義語として扱われています。

ヘモグロビンは糖と結合すると、赤血球の寿命がくるまでその状態を保つため、HbA1cは、1~2ヶ月の平均血糖値を反映し、糖尿病の検査として用いられています。

但し、溶血性貧血のように赤血球の寿命が短くなる場合、血液中で糖とヘモグロビンが結合する期間が短くなるのでHba1cは低値を示します。

HbA1cと食事

HbA1cは血糖と違って、検査前の食事の影響を受けません。

また、糖尿病のように、血液中のグルコース濃度の高い状態が持続すると、ヘモグロビンは糖と結合する割合が高くなり、また、一度結合すると赤血球の寿命が来るまでそのまま結合した状態を保ちます。

これらの理由から、HbA1cは糖尿病の診断や糖尿病患者の血糖コントロールの指標として用いられています。

糖尿病患者さまが血液検査があるからといって、数日前から粗食にして、その場しのぎに血糖値を下げたりすることがありますが、HbA1c は1~2 ヶ月前の血糖値を反映しますから、前日粗食にしたからといって、値に影響を及ぼさないため、糖尿病患者さまが日頃、摂生しているか不摂生しているかが分かってしまうというわけです。

糖尿病の診断基準

臨床診断
1)初期検査
①空腹時血糖値≧126mg/dl
②75gOGTT(糖負荷検査)2時間値≧200mg/dl
③随時血糖値≧200mg/dl
④HbA1c≧6.1%(国際標準値の場合は6.5%)

①~④のうちいずれかを認めた場合は、「糖尿病型」と判定する。
別の日に再検査を行い、再び「糖尿病型」が確認されれば糖尿病と診断する。

但し、HbA1cのみの反復検査による診断は不可。
また、血糖値とHbA1cが同一採血で糖尿病型を示すこと(①~③のいずれかと④)が確認されれば、初回検査だけでも糖尿病と診断できる。

2)血糖値が糖尿病型(①~③のいずれか)を示し、かつ次のいずれかの条件がみたされた場合は、初回検査だけでも糖尿病と診断できる。
・糖尿病の典型的症状(口渇、多飲、多尿、体重減少)の存在
・確実な糖尿病網膜症の存在

3)過去において、上記1)ないしは2)の条件がみたされていたことが確認できる場合には、現在の血糖値が上記の条件に合致しなくても、糖尿病と診断するか、糖尿病の疑いを持って対応する必要がある。

4)上記1)~3)によっても糖尿病の判定が困難な場合には、糖尿病の疑いを持って患者を追跡し、時期をおいて再検査する。

※検査時はストレスのない状態での高血糖の確認が必要。

(2010年:糖尿病学会 糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告より引用)

妊娠糖尿病の診断基準

妊娠糖尿病とは
妊娠中にはじめて発見または発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常で、あきらかな糖尿病は含めないもの。

診断基準
妊娠中に発見される耐糖能異常には、1) 妊娠糖尿病 2) 妊娠時に診断された明らかな糖尿病の2つがあり次の診断基準により診断する

妊娠糖尿病
75gOGTT(糖負荷検査) において次の基準の1 点以上を満たした場合に診断する。
1)空腹時血糖値 ≧92mg/dL
2)1時間値 ≧180mg/dL
3)2時間値 ≧153mg/dL

妊娠時に診断された明らかな糖尿病 
以下のいずれかを満たした場合に診断する。
1)空腹時血糖値≧126mg/dl
2)HbA1C ≧6.5%(HbA1C (JDS) ≧6.1%)
3)随時血糖値>200mg/dl
随時血糖値>200mg/dlの時は、空腹時血糖かHbA1cで確認
4)糖尿病性網膜症が存在する場合

※妊娠中の75gOGTT
2 時間血糖値≧200mg/dL の場合は、あきらかな糖尿病診断基準項目 1)-4) について検討し、あきらかな糖尿病かどうか判定する。

特に HbA1C6.1%以下で 75gOGTT2 時間値≧200mg/dL の場合は、明らかな糖尿病とは判定し難いので、ハイリスク妊娠糖尿病とし、妊娠中は糖尿病に準じた管理を行い、出産後は糖尿病に移行する可能性が高いので厳重なフォローアップが必要である。

(日本糖尿病・妊娠学会 妊娠糖尿病の定義および診断基準より引用)

検査の目的

糖尿病などの高血糖をきたす糖代謝異常が疑われる場合やその経過観察

参考基準値 (単位:%)

4.7 ~ 6.2 (NGSP)

※基準値は施設ごとで異なる場合があります。

HbA1cが異常値を示す病態

高値
糖尿病、その他(高血糖を示す疾患)

低値
溶血性貧血、その他(赤血球寿命が短縮する疾患など)