尿比重の概要
この項目は、試験紙を用いて尿の比重を調べる検査です。
尿比重とは、尿中に溶けている物質の量を示すものです。
尿は、体内で余分な水分の他に体内の老廃物が含まれているため、水よりもやや比重が高くなります。
尿に多くの物質が含まれていれば、尿は高比重となり、溶けている物質が少なければ尿は低比重となります。
健常者の場合、尿量と尿比重は反比例を示します。
尿量が多くなれば、その分希釈されて尿比重は低下し、尿量が少なくなればその分濃縮されて尿比重は上昇します。
一般的に尿比重は、1.015前後(24時間尿の場合)であり、必要に応じて腎臓で1.002~1.045の間で調節しています。
健常者でも、水分摂取の量や発汗量などによって大きく変動します。
このように尿比重は、水分摂取の量や発汗量などによって大きく変動するため、1回の尿検査によって病的であるか否かを判断するのは困難です。
尿比重の分類
低比重
尿比重が1.008以下のものを指します。
例えば、抗利尿ホルモンの低下(尿崩症)が起こると、尿量が増えるため常に尿比重が低下します。
これは、抗利尿ホルモン(バソプレシン)が、腎臓にはたらきかけて水分の再吸収を促す働きがあるためです。
等張尿
尿比重が常に一定(1.010付近)の値を示すものです。
例えば、腎不全などのように腎臓の機能が低下して腎臓での濃縮力の障害がおこると、血漿浸透圧に近い比重の尿がつくられるため、尿比重が上下せずに比重の変動する幅が狭くなります。
高比重
尿比重が1.030以上のものを指します。
例えば、糖尿病の場合多尿になりますが、尿中に糖分が含まれるため高比重を示します。
また、高熱や下痢・嘔吐による脱水状態が起こると、尿が濃縮されるために高比重を示します。
検査の目的
1)尿のスクリーニング検査として
2)腎での尿の濃縮力を知るため
参考基準値
1.005 ~ 1.030
※基準値は施設ごとで異なる場合があります。
尿比重が異常を示す病態
高い値(高比重)
糖尿病、脱水(嘔吐、下痢、発汗、発熱など)、造影剤使用後、運動後 など
低い値(低比重)
尿崩症、腎炎、腎不全 など