尿潜血(血尿)について

尿潜血(血尿)の概要

この項目は、血尿であるかどうかを調べる検査です。

尿潜血検査は試験紙(定性法)で行われ、厳密に言うと、血液に存在する赤血球中のヘモグロビンが尿中に存在するかどうかを調べています。

主に腎・尿路系に炎症や損傷、腫瘍などがあると、そこから出血し、尿の中に血液が混入(血尿)するため、尿潜血検査は陽性を示します。

また、溶血性貧血などのように体内で赤血球が大量に壊される疾患の場合、赤血球に含まれるヘモグロビンが大量に放出されるため、結果的に尿の中にヘモグロビンが排泄されるので尿潜血検査は陽性となります。

尚、筋肉疾患などでミオグロビンと呼ばれる、ヘモグロビンに似た蛋白が尿中に存在しても、試験紙法の場合、尿潜血検査は陽性を示します。

肉眼的血尿と顕微鏡的血尿の違い

通常、血液が尿に混じったものを血尿といいますが、尿が赤く見た目で血尿と分かるものを「肉眼的血尿」と呼び、肉眼では分からず顕微鏡を用いた検査によって血尿と判断されるものを「顕微鏡的血尿」と呼びます。

通常、肉眼で尿潜血が陽性と判断できる肉眼的血尿は、尿1 リットル中に血液が1 ミリリットル以上混入している状態になります。

肉眼では分からない顕微鏡的血尿の場合、顕微鏡を用いて400 倍まで拡大し、1視野に5 個以上赤血球が存在していれば試験紙は陽性を示します。

健康診断で尿潜血陽性(血尿)と診断されたら・・・

この尿潜血検査は、健康診断の尿検査の項目に含まれていることがあり、みなさんのなかにも陽性と診断されたかたもいらっしゃると思います。

この尿潜血検査が陽性になる割合は、男性より女性の方が多く、年齢が高くなるにつれて陽性率が上がる傾向があります。

この尿潜血陽性になる原因には、激しい運動後や発熱・過労などにより起こる生理的な血尿や、女性では生理中のために尿に血液が混じってしまうために起こる血尿などがあり、病的でないものが多くあります。

また、尿潜血が陽性と判定され、二次検査で尿潜血が陽性になる原因が特定できるのは30~40%前後で、その特定された原因のなかでも、すぐに治療を必要とされるのは40%程度といわれています。

乳幼児の血尿は、一般的に7歳くらいになると半数近くの方が尿潜血が陰性となります。

また、ナットクラッカー現象や良性家族性血尿などによって陽性とあらわれることがありますが、ともに予後は良好です。

このように尿潜血陽性のなかには、生理的に出現するものや、良性疾患によって出現するものが多くありますが、なかには、尿路(腎臓、膀胱、尿管など)の悪性腫瘍や腎炎、その他の尿路系疾患などが原因であらわれていることがありますので、尿潜血が陽性といわれた方は、定期的に尿検査を実施するようにしましょう。

補足

1)ナットクラッカー現象(くるみ割り現象)
左腎静脈が腹部大動脈と上腸間膜動脈に挟まれて狭窄を起こす現象です。
狭窄が起こることにより、左腎静脈圧が上昇し、その結果血尿が出るようになります。

2)良性家族性血尿
遺伝性のもので、腎臓にある糸球体基底膜と呼ばれる膜が生まれつき薄い病気です。
一般的に予後の良い病気です。

尿潜血検査の目的

1)尿のスクリーニング検査として
2)腎疾患などの泌尿器疾患を疑う時やその経過観察のため
3)健康診断項目として(労働安全衛生法で決められた法定健康診断項目には含まれていません)

参考基準値

陰性 (-)

※基準値は施設ごとで異なる場合があります。

尿潜血が陽性を示す病態

腎臓の病気
急性、慢性腎炎(糸球体腎炎、ループス腎炎など)、腎結石、腎腫瘍、遊走腎、腎外傷、のう胞腎 など

尿管の病気
尿管結石、尿管腫瘍 など

膀胱の病気
膀胱炎、膀胱結石、膀胱腫瘍 など

その他泌尿器関連の病気
前立腺炎、前立腺がん、尿道炎 など

泌尿器以外の病気
白血病、溶血性貧血(発作性夜間ヘモグロビン尿症など)、心筋梗塞、筋ジストロフィー、筋損傷、重症の火傷、発作性寒冷血色素尿症 など

検査時の注意事項

女性の場合、月経中や月経後数日は経血により尿潜血が陽性となることがありますので、可能であればこの期間は尿潜血の検査は避けたほうが良いでしょう。

尿潜血の検査は一般的に試験紙で行われます。
この検査方法の場合、大量のビタミンC(アスコルビン酸)が尿中に存在すると、偽陰性(実際は陽性でも陰性になってしまう)になることがあります。

ビタミンCは大量に摂取してもそのほとんどが24時間で尿の中に排泄されますので、前日から清涼飲料水やジュースなどビタミンCを多く含む飲料や食物は摂取しないように注意しましょう。