尿糖の概要
この項目は、尿の中に糖(ブドウ糖)が存在するかどうかを調べる検査です。
尿糖検査が陽性となる原因
尿糖検査が陽性を示す原因は、主に下記のようなものがあります。
糖尿病
健康なヒトの場合、ブドウ糖は腎臓の糸球体で濾過されますが、ほとんど全量が尿細管で再吸収されます。
そのため、微量の糖は尿の中に排泄されますが、試験紙法では陰性となるくらいの量です。(40~80mg/日)
しかし糖尿病のように、血糖が異常に高くなると、糖が尿細管での吸収能力以上に増えてしまい、尿細管で再吸収しきれなくなり尿の中に糖が多く漏れ出てきます。
この吸収能力の最大値を「閾値(いきち)」と言います。
血糖値が通常約160~180mg/dl を超えると尿糖が陽性になります。
空腹時の尿糖が陽性の場合、糖尿病の可能性が高く、食後2時間の尿糖が陰性の場合、糖尿病の可能性は低いと考えられます。
腎性糖尿
血糖値が正常であるにもかかわらず、尿細管での糖を吸収する能力(閾値)が低下しているために、尿糖が陽性を示すものです。
腎性糖尿は、先天性疾患などでも起こりますが、多くの場合、病的な意味があまりなく、治療の必要がない場合がほとんどとされています。
食餌性糖尿
これは大量の糖分を摂取した場合に尿糖が陽性を示すものです。
主に胃を切除した方に多くみられます。
胃を切除した場合、炭水化物などの食物が胃に溜まることなく一度に小腸に送られてしまいます。
そして、小腸から炭水化物などの糖分がいっきに吸収されてしまい、高血糖状態となります。
これにより、糖が尿細管での吸収能力(閾値)以上に増えてしまい、尿細管で再吸収しきれなくなり尿糖が陽性となります。
病気によるもの
甲状腺機能亢進症
甲状腺の機能が亢進すると、血糖値が上昇し高血糖状態となるため、糖が尿細管での吸収能力(閾値)以上に増えてしまい、尿細管で再吸収しきれなくなり尿糖が陽性を示すようになります。
腎障害
腎障害でも主に尿細管の障害が起こると、糖の再吸収ができなくなるため、尿糖が陽性となります。
その他
ストレスや精神緊張の際にも、一過性に尿糖が陽性になることがあります。
尿糖と血糖の関係
よく血糖が高くても、尿糖が陰性(低値)であることがあります。
これは尿糖の場合、高血糖状態の血液が腎臓で処理を受けてから吸収できない分の糖が尿の中に排泄されるためで、この腎臓での処理の時間分(だいたい30分ほど)尿糖のほうが遅く陽性(高値)となるからです。
そのため、血糖が高い場合、その時点よりも30分~1時間あとの尿の方が尿糖は陽性となりやすいです。
ただし、尿は膀胱で溜められているため、検査時の尿糖は血糖測定時の血糖と相関しないことがあります。
妊娠と尿糖
妊娠することにより、非妊娠時よりも尿糖が陽性を示しやすくなります。
これは、妊娠をすると腎臓の糸球体でろ過される血液量が増えるためで、腎血漿流量は妊娠前に比べ約30%、糸球体濾過量は約50%増加します。
このように妊娠時には、糸球体ろ過量が増加するため尿糖が陽性となりやすくなります。
尿試験紙(定性法)による尿糖検査陽性と定量との関係
1+:尿糖が100~249mg/dl相当
2+: 〃 250~499 〃
3+: 〃 500~999 〃
4+: 〃 1000~1999 〃
5+: 〃 2000~ 〃
※試験紙の種類によって若干の違いはあります。
検査の目的
1)尿のスクリーニング検査として
2)健康診断の尿検査項目として
3)糖尿病を疑う場合や、その経過観察のため
参考基準値
陰性 (-)
※基準値は施設ごとで異なる場合があります。
尿糖が陽性を示す病態
糖尿病、内分泌疾患(甲状腺機能亢進症、末端肥大症など)、急性・慢性膵炎、クッシング症候群、腎疾患(慢性腎不全、間質性腎炎など)、褐色細胞腫、心筋梗塞、脳血管疾患、胃切除後 など
検査時の注意事項
尿糖の検査は一般的に試験紙で行われます。
この検査方法の場合、大量のビタミンC(アスコルビン酸)が尿中に存在すると、偽陰性(実際は陽性でも陰性になってしまう)になることがあります。
そのため、前日から清涼飲料水やジュースなどビタミンCを多く含む飲料や食物は摂取しないように注意しましょう。