APTTの概要
この項目は、凝固検査であるAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)を調べる検査です。
血液は、様々な経路や因子が絡み合って固まりますが、APTTは内因系凝固因子(第Ⅷ、Ⅸ、ⅩⅠ、ⅩⅡ因子、高分子キニノーゲン、プレカリクレイン)と共通系凝固因子(第Ⅰ(フィブリノゲン),Ⅱ(プロトロンビン),Ⅴ,Ⅹ因子)を反映します。
外因系とは、けがなどによって障害を受けた組織から組織因子が放出されることで起こる凝固形態のことです。
また、その反対に内因系とは、血管内皮細胞が壊されてコラーゲンが露出することによって起こる凝固形態です。
APTTとヘパリンについて
ヘパリンは抗凝固薬の一種で、血栓塞栓症の治療や予防、DIC(播種性血管内凝固症候群)の治療などに用いられており、APTTはヘパリンの調整をする際に検査されます。
ヘパリンは、体内でアンチトロンビンを活性化させる作用があり、そのためにAPTTが延長します。
アンチトロンビン(ATまたはATⅢ)とは、凝固阻止因子で、トロンビンや他の活性化凝固因子(Ⅸa,Ⅹa,ⅩⅠa,ⅩⅡa)やプラスミン、カリクレインを阻害する作用があり、ヘパリンが加わることでこの作用が増強されるためにAPTTが延長します。
各病態とAPTTの関係
肝疾患
APTTに関係のある凝固因子で第Ⅷ因子以外は肝臓で作られるため、肝疾患により肝臓が障害を受けると、これらの因子が不足し、その結果APTTが延長するようになります。
ビタミンK欠乏症
APTTに関係のある凝固因子で第Ⅷ因子以外は肝臓で作られますが、このうちⅡ(プロトロンビン),Ⅸ、Ⅹ因子は肝臓で作られる際にビタミンKを必要とします。
そのため、ビタミンKが不足するとこれらの因子も不足するためにAPTTが延長するようになります。
母乳栄養児はビタミンK欠乏症がみられることがありますが、これは、母乳にはビタミンKの含まれる量が少ないために起こります。
ただし現在は、予防的にビタミンKを補充するようになっているため、新生児におけるビタミンK欠乏症は稀です。
DIC(播種性血管内凝固症候群)
DICの場合、体内で凝固の亢進が起こり、凝固因子が通常時よりも多く消費されるため、APTTが延長するようになります。
血友病A、血友病B
血友病Aは先天的に第Ⅷ因子を、血友病Bは先天的に第Ⅸ因子が欠乏しているため、APTTが延長するようになります。
抗生剤
ビタミンKは食物からも摂取されますが、体内の腸内細菌によっても作られています。
そのため、抗生物質によって腸内細菌が死滅すると、体内でビタミンKの作られる量が減り、ビタミンK欠乏症と同じようにAPTTが延長するようになります。
PTとAPTTによる欠乏因子の鑑別
①PT正常・APTT延長
欠乏が考えられる因子:第Ⅷ、Ⅸ、XI、XII(単一又は複合)
②PT延長・APTT正常
欠乏が考えられる因子:第Ⅶ
③PT延長・APTT延長
欠乏が考えられる因子:第Ⅰ、Ⅱ、Ⅴ、Ⅹ(単一又は複合)
検査の目的
1)出血傾向のスクリーニング検査として(通常PTと併せて実施)
2)血液の凝固障害を疑う場合や、その経過観察として
3)ヘパリン治療時におけるコントロールの指標として
参考基準値(単位:秒)
25.0 ~ 36.0
※基準値は施設ごとで異なる場合があります。
APTTが高値(延長)を示す病態
・第Ⅰ,Ⅱ,Ⅴ,Ⅷ,Ⅸ,Ⅹ,ⅩⅠ,ⅩⅡ因子,高分子キニノゲン,プレカリクレイン各因子欠乏症、血友病A(第Ⅷ因子欠乏)、血友病B(第Ⅸ因子欠乏)
・肝疾患(肝硬変、肝臓がん など)、ビタミンK欠乏症、抗生物質の長期投与、DIC(播種性血管内凝固症候群)