PT(プロトロンビン時間)

PTの概要

この項目は、凝固検査であるプロトロンビン時間(PT)を調べる検査です。

血液は、様々な経路や因子が絡み合って固まりますが、PTは外因系凝固因子(第Ⅶ因子)と共通系凝固因子(第Ⅰ(フィブリノゲン),Ⅱ(プロトロンビン),Ⅴ,Ⅹ因子)を反映します。

外因系とは、けがなどによって障害を受けた組織から組織因子が放出されることで起こる凝固形態のことです。

また、その反対に内因系とは、血管内皮細胞が壊されてコラーゲンが露出することによって起こる凝固形態です。

PT-INR(プロトロンビン時間 国際標準比)

プロトロンビン時間の測定は、各社の試薬毎で検査値にバラツキが生じます。

INRは、標準試薬を設定し、これを基準として各試薬の感度をISI(国際感度指数)と呼ばれる指数(各試薬に記載)で表示し、計算式を用いて試薬毎の検査値のバラツキをを補正したもので、ワーファリンなどの抗凝固薬を国際的に安心して用いることができるようにWHOが提唱したものです。

基準値は1.0で、PTが延長するにつれてINRも値は大きくなります。

一般的にワーファリンのコントロール目的で使用されることが多く、疾患や病状にもよりますが、2~3に保たれることが多いです。

計算式
INR =(患者血漿のPT/正常血漿のPT)ISI

各病態とPTの関係

肝疾患
プロトロンビン時間に関係のある、第Ⅰ(フィブリノゲン),Ⅱ(プロトロンビン),Ⅴ,Ⅶ、Ⅹ因子は肝臓で作られるため、肝疾患により肝臓が障害を受けると、これらの因子が不足し、その結果PTが延長するようになります。

ビタミンK欠乏症
プロトロンビン時間に関係のある、第Ⅰ(フィブリノゲン),Ⅱ(プロトロンビン),Ⅴ,Ⅶ、Ⅹ因子は肝臓で作られますが、、このうちⅡ(プロトロンビン),Ⅶ、Ⅹ因子は肝臓で作られる際にビタミンKを必要とします。

そのため、ビタミンKが不足するとこれらの因子も不足するためにプロトロンビン時間が延長するようになります。

母乳栄養児はビタミンK欠乏症がみられることがありますが、これは、母乳にはビタミンKの含まれる量が少ないために起こります。

ただし現在は、予防的にビタミンKを補充するようになっているため、新生児におけるビタミンK欠乏症は現在では稀です。

DIC(播種性血管内凝固症候群)
DICの場合、体内で凝固の亢進が起こり、凝固因子が通常時よりも多く消費されるため、プロトロンビン時間が延長するようになります。

抗生剤
ビタミンKは食物からも摂取されますが、体内の腸内細菌によっても作られています。

そのため、抗生物質によって腸内細菌が死滅すると、体内でビタミンKの作られる量が減り、ビタミンK欠乏症と同じようにプロトロンビン時間が延長するようになります。

ワーファリン
ワーファリンは、ビタミンKの作用を阻害して肝臓で作られる凝固因子を作れないように働くため、ワーファリン服用時にはプロトロンビン時間は延長するようになります。

PTとAPTTによる欠乏因子の鑑別

①PT正常・APTT延長
欠乏が考えられる因子:第Ⅷ、Ⅸ、XI、XII(単一又は複合)

②PT延長・APTT正常
欠乏が考えられる因子:第Ⅶ

③PT延長・APTT延長
欠乏が考えられる因子:第Ⅰ、Ⅱ、Ⅴ、Ⅹ(単一又は複合)

検査の目的

1)出血傾向のスクリーニング検査として(通常APTTと併せて実施)
2)血液の凝固障害を疑う場合や、その経過観察として
3)ワーファリン治療時におけるコントロールの指標として

参考基準値

時間 : 10 ~ 13  (秒)

活性 : 70 ~ 130 (%)

INR  : 0.85 ~ 1.15

※基準値は施設ごとで異なる場合があります。

PTが高値(延長)を示す病態

・第Ⅰ、Ⅱ、Ⅴ、Ⅶ、Ⅹ因子欠乏症
・肝障害(急性肝炎、肝硬変、肝臓がん など)、ビタミンK欠乏症、DIC(播種性血管内凝固症候群)、抗生剤の長期利用、母乳栄養児 など