妊娠と尿糖検査
妊婦検診をうけると、毎回尿をとり糖が出ているかどうかを調べていると思います。
これは、糖尿病や妊娠糖尿病を早期に発見する目的があります。
通常は、尿中には微量の糖が排泄されていますが、スクリーニング検査で用いられる試験紙では陰性となる程度です。
尿糖が陽性となった場合は、糖尿病や妊娠糖尿病の可能性もありますので注意が必要です。
ただし、ここで注意しなければならないことがあります。
それは、1回尿糖が陽性となったからといって、必ずしも病気とは限らないということです。
なぜならば、疲れなどの体調不良などでも一過性に陽性を示すことがありますし、妊娠することにより、妊娠前よりも尿糖が陽性を示しやすくなります。
これは、妊娠をすると腎臓にある糸球体と呼ばれる場所でろ過される血液量が増えるためで、腎血漿流量は妊娠前に比べ約30%、糸球体濾過量は約50%増加します。
このように妊娠により腎臓に負担がかかることにより、妊娠前と比べて尿蛋白が出やすくなります。
また、妊娠後期に進むにつれてブドウ糖を処理するインスリンを分解してしまうホルモンが胎盤で作られるため、高血糖状態になりやすく、この影響もあり妊娠時、特に後期は陽性を示しやすくなります。
※上記のように、妊娠時は通常時よりも尿糖が出やすい状態となってはおりますが、尿糖が出た場合は、担当医師の意見を聞いて、カラダに負担をかけない生活を心がけましょう。
妊娠糖尿病とは?
妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見または発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常で、あきらかな糖尿病は含めないものを指します。
妊娠時に高血糖状態が続くと、お母さんの体に早産や羊水過多、妊娠高血圧症候群、尿路感染症など様々な影響を及ぼす恐れがあり、また、胎児には巨大児、新生児の低血糖が起きやすくなります。
妊娠糖尿病の診断基準
診断基準
妊娠中に発見される耐糖能異常には、1) 妊娠糖尿病 2) 妊娠時に診断された明らかな糖尿病の2つがあり次の診断基準により診断する
妊娠糖尿病
75gOGTT(糖負荷検査) において次の基準の1 点以上を満たした場合に診断する。
1)空腹時血糖値 ≧92mg/dL
2)1時間値 ≧180mg/dL
3)2時間値 ≧153mg/dL
妊娠時に診断された明らかな糖尿病
以下のいずれかを満たした場合に診断する。
1)空腹時血糖値≧126mg/dl
2)HbA1C ≧6.5%(HbA1C (JDS) ≧6.1%)
3)随時血糖値>200mg/dl
随時血糖値>200mg/dlの時は、空腹時血糖かHbA1cで確認
4)糖尿病性網膜症が存在する場合
※妊娠中の75gOGTT
2 時間血糖値≧200mg/dL の場合は、あきらかな糖尿病診断基準項目 1)-4) について検討し、あきらかな糖尿病かどうか判定する。
特に HbA1C6.1%以下で 75gOGTT2 時間値≧200mg/dL の場合は、明らかな糖尿病とは判定し難いので、ハイリスク妊娠糖尿病とし、妊娠中は糖尿病に準じた管理を行い、出産後は糖尿病に移行する可能性が高いので厳重なフォローアップが必要である。
(日本糖尿病・妊娠学会 妊娠糖尿病の定義および診断基準より引用)
検査時期と検査方法
検査時期
妊婦健診ごと
検査方法
尿のなかに検査専用の試験紙を浸して検査
参考基準値
(ー)
検査時期や基準値・検査方法などは医療機関により異なる場合があります。
※ 尿蛋白検査については、尿検査カテゴリーの「尿糖」にも詳しく記載してありますので、こちらもご参考下さい。